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◆『天文手帳』へのよくある質問

■月齢

【質問】『天文手帳』の「天文カレンダー」に表記されている月齢と、新聞などに掲載されている月齢の値が違っているのはなぜですか?

【回答】月齢は、新月の瞬間から、1日を単位としてその時刻までの時間経過を表わしたものです。『天文手帳』の「天文カレンダー」に表記されている月齢は、21時の値です(『天文手帳』の冒頭にある「天文手帳の使い方」に説明されています)。新聞に掲載されている月齢は、たとえば『朝日新聞』なら、「今日の天気」の下「あす」の欄にあり、何時の月齢なのか示されていませんが、正午(お昼の12時)の値を示しているようです。したがって、新聞に出ている月齢と『天文手帳』の月齢は、対象となる時刻が9時間ほどずれていますので、1日を単位とすると 9÷24=0.375≒0.4 だけ違っています。

 ではなぜ21時を選んだかということですが、『天文手帳』が1977年に刊行され始めた当時の著者はすでに亡くなられていますので詳しい編集方針はわかりませんが、推測することは可能です。創刊の翌年、1978年版から月齢の値は21時で表記されています。まず、月齢の値は時間とともに刻々変わっていくので、天文ファンが月などを観測する時間帯として21時あたりが一番適切だろうという判断があったと思われます。また、本格的な天体観測の日時表記として使用されるユリウス日(『天文手帳』の「天文資料」p.34)の0時が日本時の21時(世界時12時)にあたるので、21時を月齢表記の時刻にしたということも考えられます。

■日出方位

【質問】『天文手帳』の「天文カレンダー」で、週ごとの見開きページ左側にある「日出方位」「南中時刻」「南中高度」「薄明始」「薄明終」などは、どこの地点の値なのでしょうか?

【回答】東京(東経139°45′、北緯35°39′)です。『天文手帳』では、時刻等に関して特に断らない限り、この東京での値を使用しています。なお、この場所は、日本の経緯度原点(東京都港区麻布台2-18-1、東経139°44′28″.8869、北緯35°39′29″.1572)に近い場所で、何か特に由緒があるわけではなく(東京都港区芝二丁目と四丁目間の路上)、経緯度を度の単位で表わしたときに、小数点以下第二位まで(東経139.75°、北緯36.65°)でおさまるようにということで採用されています。

■日出時刻

【質問】『天文手帳』の「天文カレンダー」で、週ごとの見開きページ左側にある「日出」「日没」「月出」「月没」などの時刻が、新聞に出ている時刻とわずかに違っていることがありますが、どうしてでしょうか?

【回答】『天文手帳』に掲載されている時刻は、上記の「日出方位」の説明にもあるように東京都港区芝二丁目と四丁目間の路上(東経139°45′、北緯35°39′、標高4m)での値です。新聞に掲載されている東京での値、たとえば『朝日新聞』「東京」面のタイトルの下、「きょうの天気」の下、「あす」の欄にある「日出」「日入」「月出」「月入」の時刻の基準になっている場所については、特に表記はありません。『朝日新聞』(東京本社お客様オフィス)によりますと、これらは国立天文台からデータの提供を受けているとのことです。

 国立天文台編の『理科年表』などで「東京」は、日本の経緯度原点(東京都港区麻布台2-18-1、東経139°44′28.8759″、北緯35°39′29.1572″)が採用されていますので、各報道機関へ提供されている「日出」時刻なども、この「東京」であるはずです。『天文手帳』の「東京」とは、約30″ほど違っています。この程度の違いでは、「日出」時刻は分単位ではほとんど変わりませんが、秒単位での四捨五入の関係で、1分程度違ってくる場合があります。同じ「東京」でも、『天文手帳』と新聞で違っているのはこのためです。

■月の出

【質問】『天文手帳』の「天文カレンダー」に表記されている毎日の「月出」や「月没」で、その時刻が記載されていない日がありますが、どうしてですか?

【回答】たとえば、2017年1月6日の「月没」は「--:--」となっていて、確かに時刻の記載がありません。これは、その前後の日のそれぞれの時刻などから、月の出、月の入りの様子を具体的に考えてみればわかると思います。

 前日、1月5日の深夜23時35分(1月6日00時の25分前)に、月が沈んでいます。次の日(1月6日)の午前中、11時45分に月の出があり、日没の頃には上弦の月が南の空にあり、夜になると月は西の空に傾いていきますが、その日(1月6日)のうちに沈むことはなく、日が変わって1月7日の00時45分に月没となります。つまり、1月6日には「月没」がなかったことになります。

 「月出」の時刻が「--:--」となっているのも同じで、前日深夜24時ちょっと前に月の出があり、次の月の出は、当日ではなく次の日の深夜00時をわずか過ぎた頃になります。つまり、その夜に月が昇らなかったり、沈まなかったりするわけではなく、深夜00時を境に日付がかわってしまうためだということです。

■春分点の記号

【質問】『天文手帳』の「天文カレンダー」右ページ上段にある惑星の軌道図で、矢印“→”方向にある噴水のような記号は何を意味しているのですか?

【回答】これは、春分点(の方向)を表わす記号です。春分の日(3月21日または3月20日)を含む週(2015年版なら3月16日(月)〜22日(日)の週)を見ると、地球の位置から見た太陽方向と矢印の方向がほぼ一致しています。つまり、地球から見ると春分点方向に太陽があるわけです。天球上で、太陽が春分点を通過する日が「春分の日」です。

 この春分点の方向を示す記号は、もともとは(昔、春分点があった)おひつじ座を表わす記号です。「黄道十二宮」の解説などに、その12星座の記号が出ていますが、羊の角を表わしているそうです。この記号を作図するのが面倒なときは、ギリシャ文字の「γ」(ガンマ)で代用することもあります。
 なお、現在は、春分点はおひつじ座にはなく、うお座に移動していますが、慣用的におひつじ座の記号を春分点を表わす記号として使っています。天球座標や太陽系の直角座標を表わすときも、この春分点方向をX(エックス)軸とするのが一般的です。

■換算表

【質問】『天文手帳』「天文資料」p.14(2017年版)ページにある各種の「換算表」の意味がよくわかりません。たとえば、太陽質量「1」に対して、地球の質量が「3.331×10^5」(「10^5」は「10の5乗」の意味)というのはおかしいのではないでしょうか?

【回答】他の長さ、質量、時間なども同じ方式なのですが、この換算表の意味は、「太陽の質量が1に対して、地球の質量が3.331×10の5乗倍」という意味ではなく、それぞれの項目名が単位を表わし、

   1 [太陽質量]=3.331×10^5 [地球質量]

という換算式の係数を示しています。たとえば、長さのところなら

   1 [パーセク]=3.26163 [光年]=2.06265×10^5 [天文単位]
   =3.08568×10^13 [km]

という意味です。

■ユリウス年

【質問】『天文手帳』「天文資料」p.15(2017年版)の下側にある惑星の表で、「公転周期」が「ユリウス年」で表記されているのはなぜですか?

【回答】地球の1年の長さは変動するため、長さが365.25日(31557600秒)で定義されているユリウス年で表記しています。惑星の公転周期は、通常このユリウス年で表記されています。なお、ユリウス年という名称は、ユリウス暦での平均年が365.25日であることに由来していますが、ユリウス日(JD)とは別の概念です。
 なお、100ユリウス年(36525日)をユリウス世紀(3155760000秒)といい、位置天文学での計算の時間単位として使われます。

■南中時刻

【質問】『天文手帳』の「天文カレンダー」に表記されている太陽の「南中時刻」が変化するのはどうしてですか?

【回答】太陽は、天球上を星座を背景にして毎日西から東へ移動し(毎日、太陽が東から昇って西へ沈む日周運動とは別です)、一年かかって元の場所に戻ってきます。この天球上の西から東への移動速度が一定なら、太陽は一年を通して同じ時刻に南中します。実際には、後述するような理由で一定速度ではありません。実際の太陽とは別に、天球上を一定の速度で移動する仮想的な太陽を仮定し、これを「平均太陽」と呼んでいます。

この「平均太陽」とは違って、実際の太陽が天球上を一定の速度で移動しないのは、次の二つの理由によります。
 (1) 地球が太陽のまわりを回る軌道が完全な円ではなく楕円であるため。
 (2) 地球の自転軸が軌道面に垂直ではなく約23度ほど傾いているため。

(1)の理由により、地球は、太陽に近いときには速く軌道上を動き、太陽から遠いときには遅くなります。そのため、地球から見た太陽の一年間の動きもそれにしたがって変動し、天球上での移動速度が違ってきます。

(2)の理由により、太陽は、夏には天球上を北寄りに移動し、冬には南寄りに移動します。この太陽の天球上の経路を黄道と呼んでいますが、仮に太陽がこの黄道上を一定の速度で移動しても、この南北への移動が大きいとき(春分・秋分前後)にはその分西から東への移動量は小さくなり、南北への移動が小さいとき(夏至・冬至前後)には西から東への移動量が大きくなります。

もし、太陽が南中してから次の南中までの時間を一日とすると、南中時刻の変化によって、一日の長さも変化するということになります。一年のある時期は24時間より多くなり、またある時期は24時間より少なくなります。平均太陽なら、必ず一定の時刻に南中するわけですが、その場所で実際に太陽が南中する時刻との差は、均時差と呼ばれ、日時計で時刻を計るときなどに必要になってきます。

■読者対象

【質問】『天文手帳』は、天文(学)の知識がある人を対象としているのですか?

【回答】読者対象を厳格に定めているわけではありませんが、市販されている天文雑誌を購読されているような天文ファンを想定しています。『天文手帳』の4ページ目(扉ページの裏になります)からの「天文手帳の使い方」の内容や用語がわからないとなると、すぐに『天文手帳』を100%活用することはむずかしいかもしれませんが、高度な天文知識を必要とするわけではないので、使っているうちに理解できるようになるはずです。

■パンスターズ彗星

【質問】『天文手帳』2013年版の「天文カレンダー」の11月29日に「近日点を通過」とあるパンスターズ彗星は、アイソン彗星の間違いではないでしょうか?

【回答】11月29日に「近日点を通過」とあるパンスターズ彗星(C/2012A1)は、2013年3月に明るくなるのではないかと注目されているパンスターズ彗星(C/2011L4、3月10日近日点通過)とは別の彗星です。今回、たまたま、アイソン彗星(C/2012S1)とパンスターズ彗星(C/2012A1)の近日点通過予報日が同じ日になったために、紛らわしいことになりました(C/2012A1は、その後の観測で、2013年12月2日の近日点通過が予報されています)。こちらのパンスターズ彗星は、肉眼で見えるほどは明るくはならないとされています。

 『天文手帳』2013年版は、2012年の8月ぐらいまでに原稿が作成され、アイソン彗星(C/2012S1)が発見された2012年9月21日にはすでに印刷段階に入ってました。したがって『天文手帳』2013年版には、アイソン彗星の予報は記載できませんでした。

 ちなみに、「パンスターズ」とは、ハワイにあるパンスターズ (Pan-STARRS, Panoramic Survey Telescope And Rapid Response System) という4台の望遠鏡を用いた全天観測プロジェクトの名称で、地球に衝突する可能性のある天体を発見することを目的としています。このプロジェクトで発見された彗星はどれも「パンスターズ彗星」ということになりますので、どの「パンスターズ彗星」かは、その彗星の「符号」(C/2012A1、C/2011L4、……)を見なければわかりません。

■「主な星食」欄の星名

【質問】「天文資料」の「主な星食」の表(2017年版、p.6)に掲載されている「星名」で、「264B.Tau」のように、ほかと形式が違っているものがありますが、これはどうしてですか。

【回答】この「星名」は、原則として、フラムスチード番号、バイエル記号(ない場合もある)、星座名の略号の順で表記しています。たとえば、2017年版の場合、1月9日の「75 Tau」は、「75」がフラムスチード番号、「Tau」は、おうし座の略号ですから「おうし座75番星」ということです。1月9日の「87 α Tau」は、「おうし座87番星」、つまり、おうし座のアルファ星「アルデバラン」を意味しています。
 1月9日の「264B.Tau」は、おうし座の星ですが、フラムスチード番号やバイエル記号がないので、別の星表の番号で表記しています。「264B.」は、ヨハン・ボーデ(「ボーデの法則」で知られるボーデです)の星表で264番の星を表しています。この他にも、年によって表記形式の異なる星がこの表に登場することがあります。数字のあとにB.、H1.、G.、H. が付く場合は、それぞれ
  B. ⇒ J.E.ボーデ(ドイツ)
  H1.⇒ E.ハインツ(ドイツ)
  G. ⇒ B.A.グールド(アメリカ)
  H. ⇒ J.ヘベリウス(ドイツ)
の星表中の番号であることを示しています。また、2014年版にあった
  −18 5155
  +17 1214
といった星名は、ボン掃天星表(またはコルドバ掃天星表)の星表番号を表しています。

■表紙の星座絵

【質問】『天文手帳』の表紙の星座絵が、普通に描かれている星座絵と比べると左右逆になっていますが、どうしてですか?

【回答】『天文手帳』の表紙に使っている星座絵(紺のビニール表紙に箔押し)は、弊社が刊行している『ヘベリウス星座図絵』からとっています。上記のページの「概要」にもあるように、この星座絵は、ポーランドの天文学者ヘベリウスが、天球を外側から描いた56枚の星座図絵です。15世紀に作成された「ウルグ・ベグ星表」を17世紀に眼視による観測で校訂し、その位置をもとに星座を区分してギリシア神話に基づく星座像を描いています。この図は後年のフラムスチードなどによっても模されており、星座図の原点と言われています。

 これでおわかりのように、『ヘベリウス星座図絵』は、天球の外側から見たように描かれています。当時の天体観測機器であった天球儀などと同じ考え方です。地球から星座を眺める我々は天球儀の中から見ることになりますが、その際の我々が見慣れた星座の形に対して、天球の外側から見ると裏返し(左右逆)になります。上記の弊社サイトには、サンプルとして、しし座、ペガスス座、おうし座などの星座絵がリンクされておりますが、いずれも、通常の星座を裏返しにした形になっているのがわかるかと思います。