ブラックホール

アイデアの誕生から観測へ
表紙
マーシャ・バトゥーシャク 著
山田陽志郎 訳
ISBN978-4-8052-0901-1

四六判/288頁

\2,600+税


概要

17世紀以降の古典力学の時代にも現代の「ブラックホール」につながるアイデアは考え出されたが、当時の天文学の範疇では、ありえない天体または天文現象として考慮されることはなかった。20世紀に入っても、アインシュタインの一般相対性理論の解として「ブラックホール」の可能性が考えられたが、恒星など現実の天体ではありえないものとして拒絶された。20世紀後半になって、天体の重力崩壊現象が「ブラックホール」と名づけられたときも、まだそれを確かめる観測手段はなかったが、同時期にパルサー(中性子星)、クエーサーなどの天体が発見され、その後、エックス線天体が見つかりその膨大なエネルギーを賄う機構として「ブラックホール」が現実の天体として検討されるようになった。21世紀の現在、ブラックホールの衝突合体による重力波が驚くべき精度で実際に観測され、見えない天体「ブラックホール」の直接的証拠が提示され、ブラックホールは実在する天体としての地位を得た。本書は、それらの歴史的流れを作り出した物理学者、天文学者を中心に、多くのエピソードを紹介しながらブラックホール受容の変遷を辿っている。

原著

Black Hole: How an Idea Abandoned by Newtonians, Hated by Einstein, and Gambled on by Hawking Became Loved (Yale University Press, 2015)

著者

マーシャ・バトゥーシャク Marcia Bartusiak
天文学・物理学関係のジャーナリスト、サイエンス・ライターとして活躍する一方、マサチューセッツ工科大学では、サイエンス・ライティング・プログラムにおける客員教授として大学院生の指導にあたっている。1971年アメリカン大学(ワシントンDC)を卒業、テレビ局で記者・キャスターを務め、NASAラングレー研究所の担当になって科学への関心を強め、オールド・ドミニオン大学の物理学修士課程に入学、応用光学分野の研究を行なっている。その後、サイエンス・ライターとしてさまざまな出版物で天文学・物理学の記事を書き、『ニューヨークタイムズ』、『ワシントンポスト』などで科学書の書評を担当している。1982年アメリカ物理学協会のサイエンス・ライティング賞を女性で初めて受賞し、2001年には二度目の受賞をしているほか、サイエンス・ライティング分野で数多くの賞を受賞している。

訳者

山田陽志郎 Yoshiro Yamada
東京学芸大学大学院修士課程修了(天文学/理科教育)。東京と横浜の科学館で、長年天文を担当。国立天文台天文情報センター勤務を経て、相模原市立博物館の天文担当学芸員を務める。人工衛星追跡PCソフト Orbitron の翻訳者。最近では、小学校高学年向け『宇宙開発』(大日本図書)を執筆。訳書にはドナルド・ヨーマンズ著『地球接近天体』(地人書館)がある。小惑星9898番「Yoshiro」は、発見者と推薦者の厚意により提案され、IAU(国際天文学連合)により命名された。

目次

はじめに
第1章 宇宙で最大級に明るい天体が見えなくなる理由
 ニュートン、ミッチェル、ラプラス
第2章 ニュートンよ、許したまえ
 アインシュタイン
第3章 気が付けば、幾何学の国に
 シュヴァルツシルト
第4章 恒星がこれほど非常識な振る舞いをするはずがない。何か自然の法則があるはず!
 チャンドラセカール、エディントン
第5章 厄介者登場
 バーデ、ツヴィッキー
第6章 重力場だけが存続
 ランダウ、オッペンハイマー
第7章 物理学者になって最高でした
 ホイーラー、ゼルドヴィッチ、ペンローズ
第8章 こんな奇妙なスペクトルは見たことがない
 シュミット
第9章 ブラックホールって呼べば?
 カー
第10章 中世の拷問台
 ホイーラー
第11章 スティーヴン・ホーキングは一般相対論やブラックホールに多額の投資をする一方で、保険をかけることも忘れていなかった
 ホーキング、ソーン
第12章 ブラックホールはそれほど黒くない
 ホーキング
ブラックホール関連年表
謝辞
訳者あとがきに代えて(ブラックホール合体による重力波観測)
訳注
原注および出典
参考文献
索引