地球接近天体

いかに早く見つけ、いかに衝突を回避するか
表紙
ドナルド・ヨーマンズ 著
山田陽志郎 訳

ISBN978-4-8052-0875-5

A5判/184頁

\2,600+税

正誤表

概要

私たちにふりかかるかもしれない自然災害のうち、巨大彗星や小惑星の落下は、わずか一撃で私たちの文明を滅ぼしてしまう可能性がある。一方で、このような地球接近天体は、太陽系の起源を解く糸口を与え、いつの日か宇宙探検の足がかりを提供するかもしれない。本書では、地球接近天体の科学、歴史、応用など、「彼らが私たちを発見する前に」私たちが彼らを見つけようと研究を進める探査について紹介する。地球はその公転軌道で、何百万もの彗星や小惑星のまさに「射撃場」の中を通っていく。このような小惑星の一つが、6500万年前に地球に突入し、恐竜を絶滅させた地球規模のカタストロフの引き金を引いたと考えられている。著者はこれらの地球接近天体の脅威を理解する助けとなる最新情報を提供し、このような天体の初期の崩壊が地球生命を可能にした物質をどのようにもたらしたかを説明する。また、その後の衝突が、種の進化を促進し、最も適応力のある種だけを繁栄させ、事実、私たち人類の存在そのものが、地球に衝突した天体によるところが大きいことを示している。また、今日の地球接近天体の発見、追跡、研究の知られざる側面を読者に示す。そして、最もぶつかる可能性の高い彗星や小惑星の中に、水や酸素のような価値ある天然資源が含まれているか、さらに火星や太陽系の最果てで到達可能な天体の探検でも、それらが利用可能かどうか示す。

原著

NEAR-EARTH OBJECTS: FINDING THEM BEFORE THEY FIND US (Princeton University Press, 2012)

著者

ドナルド・ヨーマンズ(Donald K. Yeomans)は、ジェット推進研究所・専任研究員、NASA地球接近天体プログラム室長、太陽系力学グループのスーパーバイザーで、地球接近小惑星ランデブー計画の電波科学チーム研究主任である。日本の「はやぶさ」計画にNASA側の研究者として参加し、テンペル彗星への「ディープ・インパクト」計画にも加わった。1982年10月16日、パロマー天文台の5メートル反射望遠鏡によるハレー彗星回帰検出は、ヨーマンズの予報計算をもとになされている。また、1981年には、大英博物館が所蔵するバビロニアの粘土板に紀元前164年のハレー彗星の観測記述があるという発見(1985年)をサポートする研究を発表していた。余暇には、古代ローマのコインの研究と蒐集を趣味とし、テニスも楽しむ。著書には、Comets: A Chronological History of Observation, Science, Myth, and Folklore がある。2013年、雑誌『タイム』の「世界で最も影響力のあった100人(2013 TIME 100)」の一人に選出され、同年、アメリカ天文学会(AAS)の「カール・セーガン・メダル」を受賞した。

目次

目次
第1章 地球の「お隣さん」
 ミシェル・ナップと彼女の1980年型シボレーマリブ
 吹き飛ばされたS. B. セメノーフ氏
 恐竜絶滅
 彗星、小惑星、流星体、隕石、流星とは?
 地球接近天体と潜在的に危険な天体
 地球接近天体の軌道
 ロックスター:小惑星の命名
 地球接近天体の重要性
第2章 太陽系の起源――従来からの有力説
 はじめに
 太陽系現在の天体配置
 太陽系の起源
 ウォーターワールド
 玉にきず
第3章 地球接近天体は、どこで、どのようにしてできたのか?
 重力アシスト
 太陽系の形成:ニースモデル
 地球接近天体の数
 地球接近天体の起源と行く末
 ヤーコフスキー効果とヨープ効果
第4章 生命の助力者であり破壊者でもある地球接近天体
 地球さん、こちら母なる自然ですが、私の注意喚起にあなたがたは知らんぷり
 衝突が月をつくった
 生命の構築要素を地球に届ける
 恐竜の死:地球上の進化の中断への影響
第5章 地球接近天体の発見と追跡
 火星と木星の間のギャップを埋める
 地球接近小惑星の発見:パイオニアたち
 CCD撮像素子が地球接近天体の発見を大きく変える
 NASAが本気で地球接近天体探しに乗り出す
 小惑星センター、JPL、ピサ軌道計算センターの関係
 地球接近天体:次世代の捜天観測
第6章 小惑星と彗星の実体に迫る
 ドナルドダックとアンクル・スクルージ・マクダックが一番乗りだった
 ラブルパイル小惑星:衝突時の法則
 回転する岩:小惑星の自転
 地球接近小惑星のレーダー像
 彗星:地球接近天体の少数派
 移行天体:どっちつかずの小惑星と隠れ彗星
 まとめ
第7章 太陽系の天然資源と人類による太陽系探査
 地球接近天体を探査する意味は?
 地球接近天体の採鉱
 人類による地球接近天体の探査
第8章 地球への脅威としての地球接近天体
 激しく雨が降る
 大気圏突入、分解、爆風
 地上への衝突
 海洋への衝突
 重大な火球と衝突事件
  1972年8月10日、グランドティートン火球事件
  1994年2月1日の大火球
  2007年9月15日のカランカス事件
  ツング―スカ事件
  チェサピーク湾衝突事件
 忍び寄る小惑星と目立つ彗星
 小惑星の脅威? 小惑星の何が脅威なのか?
 真夜中の無気味な物音
第9章 地球衝突の可能性を予測する
 もしもし、ホワイトハウスですか? 小惑星が地球に向かっています
 軌道決定のプロセス
 NASAの地球接近天体プログラム室
 長期にわたる地球接近予報
 アポフィス:地球接近天体の典型
 宇宙の不意打ち:未発見天体による予期せぬ衝突
第10章 脅威となる地球接近天体をそらす
 簡潔、単純にいけ(KISS: Keep It Simple Stupid)
  衝突体による小惑星の軌道変更
  ゆっくりと牽引する重力トラクター
  核爆発:軌道をそらすのか、小惑星破壊か
 MITの学生、1967年に世界を救う
 危険回廊と回避のジレンマ
 担当するのは?
 最も起こりそうな衝突シナリオ
 地球に衝突する小惑星が発見されたら、どこに連絡する?
 まとめ

訳者

山田陽志郎(やまだ・ようしろう) 東京学芸大学大学院修士課程修了(天文学/理科教育)。東京と横浜の科学館で、長年天文を担当。国立天文台天文情報センター勤務を経て、現在相模原市立博物館の天文担当学芸員。人工衛星追跡PCソフト Orbitron の翻訳者。最近では、小学校高学年向け『宇宙開発』(大日本図書)を執筆。