日本のPL法を考える

市民と科学技術の目で見た製造物責任法
表紙
杉本泰治著

ISBN4-8052-0644-6

四六判/248頁

\1,600+税



概要

PL法(製造物責任法)訴訟は期待されていたほど増えてはいない.しかし被害者が「泣き寝入り」しているわけではない.著者はその要因を日本の社会における法体系の閉鎖性と,法律家・科学技術者間の構造的乖離現象にあると見る.民法起草者たちの見識は100年間の鎖国的法学によって忘れられてしまったのだ.

目次

第1章 PL 訴訟が増えない理由を探る
 あるお母さんの確信
 PL 法は新しくできた法ではない
 不法行為法から PL 法へ
 紛争解決の担い手
 行政庁の解決策
 サービス業の姿勢――第一の課題
 科学技術との関係――第二の課題
 むすび

第2章 製造物責任の法の全体像
 法律は本来、難解なものではないこと
 PL 法制定のときの争点と決着
 総合的な PL 観――カネミ油症事件
 製造物責任の法の構成
 行政庁の PL 法解釈
 「製造物の定義」の解釈のしかた
 むすび

第3章 製造物の「欠陥」の法と科学技術
 PL 法における科学技術の発見
 法律家がみた「欠陥」
 「欠陥」の科学技術
 松下カラーテレビ発火事件――裁判官の感覚
 EC 指令の「製造物の欠陥」と比べる
 アメリカ法の「製造物の欠陥」と比べる
 製造上の欠陥
 設計上の欠陥
 指示・警告上の欠陥
 むすび

第4章 法学は誰のためのものか
 法学部の内と外の関係
 素朴な疑問――「違法」と「不法」の区別
 民法起草者による区別
 明治の開国から鎖国への暗転
 闇に閉ざされた明治の偉業
 不法行為裁判の回り道
 不法行為法学の虚構
 閉鎖空間のなかの営みの行方
 むすび

第5章 グローバル化時代の課題
 裁判官への非難は正しいか
 法とモラルの区別
 判例法の位置づけ
 法学の第三の開国
 科学技術を理解する努力
 むすび

あとがき
製造物責任法 全文
文献
索引